今年4月に岸田首相が「2030年度までに男性の育休取得率を85%」にすることを目標として明言し、さまざまメディアで報じられました。これからまた国をあげて育児休業の取得促進に関する施策が進められていくものと考えられます。そのような最中、今回は意外と知られていない、東京都が推進している「育休」に関する登録制度をご紹介致します。
【家庭と仕事の両立支援推進企業制度の概要】
当制度では育児・介護などの、家庭と仕事の両立に積極的に取り組む企業等が、「家庭と仕事の両立支援推進企業」として登録することで、東京都から「両立支援推進企業マーク」を付与してもらえます。登録には「育児と仕事との両立」「介護と仕事との両立」の2種類について、自社のそれぞれの整備状況と利用実績などが評価されます。評価方法は、企業等から提出された申請書類と、東京都職員が企業等を訪問する現地調査に基づき確認が行われ、その結果、その評価結果に応じて★の数(育児・介護それぞれ1~3つ)が変わる「両立支援推進企業マーク」が付与されます。
この制度の良いところは「育児」と「介護」を別々に評価してもらえる点にあります。特に「介護」に関しては、例えば介護休業を取ってみても未だ多くの企業などに実績がないため環境整備が進んでいない傾向にありますが、「育児」の方で環境整備や実績があれば認定を受けられるようになっています。また各評価基準も、厚生労働省による女性活躍推進に基づく認定制度「えるぼし」「プラチナえるぼし」や、子育てサポート企業の認定制度「くるみん」「トライくるみん」「プラチナくるみん」などに比べると比較的にハードルが低く、中小企業でも現実的に手が届くと言える内容になっています。
女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」
くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
【登録対象】
実際に登録できる企業等については以下の通りです。
1. 都内で事業を営んでいる企業等であること。
2. 常時雇用する従業員を2名以上雇用していること。なお、常時雇用する従業員のうち1名は、6か月以上継続して雇用していること。
3. 加入条件に該当する従業員を雇用保険の被保険者としていること。
4. 就業規則を作成して労働基準監督署に届出を行っていること。
5. 過去5年間に重大な法令違反等がないこと。
基本的な登録要件は以上の通りとなりますが、その他にも対象要件がありますので詳細は募集要項をご確認下さい。
「家庭と仕事の両立支援推進企業登録制度」募集要項
登録までの流れ/評価方法
実際の申請から登録までの流れは以下の通りです。
1. 登録申請書への企業情報等入力
2. 申請書類等の提出(メールで提出が可能)
3. 現地調査の日程調整(担当者から連絡が入ります)
4. 現地調査(必要書類の事前指示があります)
5. 点数の集計
6. 登録決定通知
7. 両立支援推進企業マークの付与
8. 専用Webサイトへ掲載
そして、最も重要となる評価についてですが、評価表を利用して状況が確認され、 育児・介護 各14項目、20点満点で採点のうえ、下記の基準に応じた★付きマークが付与されます。
8点以上 ★ 12点以上 ★★ 16点以上 ★★★
※ 中小企業においては、一部採点要件を緩和しています。
項目はいずれも「法定以上の定め」となっているか、「就業規則等にきちんと明記されて届出がなされているか」など、育児・介護の環境整備における基本事項が中心であり、それに加えて育児・介護休業等の実績があれば加点されるという仕組みになっているため、社内の基本的な環境整備のバロメーターとして活用することができますので、登録を目指しながら社内の環境整備を無理なく進めていくことができます。
【登録のメリット】
登録されますと「家庭と仕事の両立支援ポータルサイト」に企業名や取組みが掲載されるため、広く社外にアピールできることに加え、「両立支援推進企業マーク」を自社ホームページや会社案内パンフレット、名刺などに掲載でき、「登録証」を自社のエントランスにも掲出することができます。現在の採用活動において、特に若年層は環境整備やその実態を職場選びの重要ポイントにしていることが、新卒採用の就活生意識調査でも明らかになっていますので、「家庭と仕事の両立支援推進企業」であること、これが東京都のお墨付きと言う事でマークも付与されてきますので、若年層の求職者への訴求力を高めることにもなり採用活動へのシナジー効果も期待できます。
その他にも登録企業は、東京都の中小企業制度融資(「働き方改革支援」などのメニュー)を利用することができます。なお、この「働き方改革支援」メニューの対象となる企業のうち、女性活躍推進に関する取組を行っている企業は、融資利率等の優遇が受けられます。(TOKYO・ウィメン・ビズ・サポート)。登録企業の様々なメリットがありますので、詳しくは以下をご参照下さい。
東京都 TOKYOはたらくネット
【まとめ】
採用広報をする場合においても、「育休制度が整っています」、「育休復帰者が多数」などと抽象的な表現をしても、なかなか求職者へ訴求力が高まらないのが現状です。そのような場合にこのような登録制度や認定制度があると、とてもわかりやすいある種の証明となり得ます。普段、求人票になかなか書くことが無いと悩んでいる企業などもありますが、これからさらに激化する採用競争にむけて、「アピールポイントは自然にできることを期待するのではなく、自社で作っていくことが大切である」と考えます。
弊所では実際にこの「家庭と仕事の両立支援推進企業制度」の登録サポートをおこなった経験に加え、前述した厚生労働省の「くるみん」や「プラチナえるぼし」の取得支援の実績などもありますので、働き方改革に取り組みたい、採用広報を強化したいとお考えになっている企業様などは、ぜひお気軽にご相談下さい。
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