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リファラル採用 導入・運用 ~注意点について~

採用競争が激化する中でリファラル採用(社員による紹介)もかなり一般的に定着をしてきた印象を受けます。求人広告や人材会社の利用をすれば、激しい採用競争が繰り広げられることが確実ですが、リファラル採用による応募者は転職市場にはいない求職者であることも多いため、他社と戦わずして採用できることも利点です。今回はリファラル採用を導入済み、またはこれから導入予定の企業様にむけて運用の注意点をご紹介致します。

【リファラル採用とは】

 

リファラルとは英語で紹介や推薦などの意味であり、リファラル採用とは自社の社員から友人や知り合いなどを紹介してもらうことで採用に繋げ、紹介してくれた社員に対して報奨金等を支給すると言ったような採用手法を指します。主なメリットとしては、採用コストの削減、他社との激しい採用競争の回避、比較的にミスマッチが起きにくく定着率も良いとされること、自社の募集したい人材像に近い人物に他の手法に比べて少ない労力でコンタクトできる点などが挙げられます。
この報奨金の額については各企業で様々ではありますが、30万円/件以下で設定をしているケースが多いようです。そしてこの報奨金について制度導入時にきちんと運用ルールを策定しておくことがトラブルの回避において重要となります。

 

 

【報奨金の扱いに関する注意】

 

●注意点1
職業安定法第40条では、「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」とされています。そのため社員に対しては【業務】として行ってもらい、その対償として【賃金、給料その他これらに準ずるもの】で支払うことが必要と言うことになりますので、実務としては手当や賞与などで支給する形にして給与規程などにその内容を明記し、社内への周知と共に管轄労基署への届出を忘れずにおこなうようにしましょう。

●注意点2
労働基準法第6条では「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」とされています。そのため報奨金があまりに高額に至る場合や、継続的に紹介して報奨金を受けている場合などには、「業」とみなされてしまう可能性が考えられます。そのため明確な基準がなく判断が難しいところではあるものの、一般的に有料職業紹介事業の紹介会社に依頼した場合、紹介手数料は採用者の推定年収の30~35%となっていますので、少なくともこの基準から割り出した額以下には抑えておく方が良いと考えられますし、年間の紹介人数の上限(例:年間●名まで)をあらかじめリファラル採用の運用ルールに定めておくことも、有効な手段と言えますので検討してみると良いでしょう。

 

 

【社会保険料の増加に注意】

 

そしてもう1つ注意を要するのが報奨金を支給する時期です。リファラル採用の報奨金については前述の通り「賃金や給料」などとして支払いを行いますので、社会保険料の算定に大きな影響を及ぼす可能性があります。社会保険には、7月1日現在で使用している被保険者(一部を除く)の3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、9月から社会保険料を改定する「定時決定」と呼ばれる手続きがあります。またこれに加えて、給与の昇降給に代表されるような固定的賃金の変動があった場合において、諸条件を満たした際に社会保険料の見直しがなされる「随時改定」と言う仕組みもあります。

<日本年金機構ホームページより引用>
定時決定
随時改定

 そのためこれらの算定に影響する時期に報奨金が支給された場合に、社員がせっかく紹介してくれたにも関わらず、たまたま不運な時期に報奨金を受け取ったがために社会保険料が増加していまい、結果的には報奨金の利益がほとんど無くなってしまったというケースも見受けられますので、支給時期については細心の注意を払い、リファラル採用の運用ルールを策定されることをお勧め致します。なお、弊所と致しましてはこのような点をはじめ、様々な影響や社内の手続き上の労力なども考慮致しますと、 基本的には賞与に加算するような形で支給する方が良いもの と考えています。

 

 

【まとめ】

 

以上のとおり、リファラル採用については十分な検討のうえ運用ルールの策定と準備をしなければ、逆に企業に対して様々な問題を引き起こすリスクがあることをご理解いただけたかと思います。ある意味トップダウンで始めようと思えば、すぐ始めることができますが、違反とされますと職業安定法第40条違反などに問われ、法律上は6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されるリスクも少なからずあります。そのようなことがないよう、極力リスクを避けて慎重に制度の導入や見直しを行う必要がありますので、ぜひ弊所を含め、社会保険労務士等にご相談いただければと思います。

 


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