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今年行われるインターンシップの大きな変更点について

2024卒の新卒採用も佳境を迎えていますが、これから並行して来年の25卒採用が徐々に動き始めます。現在の新卒採用で重要イベントとなっている「インターンシップ」について、今年からその定義や一部のルールが変わることをご存じでしょうか。今回はその内容についてご紹介致します。

【現在のインターンシップ】

 

 大手就職情報サイトの1つである、キャリタス就活を運営している株式会社ディスコが発表している最新データを参考にすると、直近のインターンシップの状況は以下とされています。

 1) 学生の参加率 91.4%
 2) 6月にインターンシップを探し始める学生が多い
 3) 参加ピークは夏期開催(8~9月)
 4) 半日または一日単位が人気傾向
 5) 講座・グループワーク・交流形式が人気傾向

インターンシップ特別調査 ~キャリタス就活2024 学生モニター調査(2023年3月)

 多くの学生が早い段階から参加しており、新卒採用をおこなう企業等にとっては無視できないものであることがわかります。なお、日本経済団体連合会が今年3月にまとめた企業むけの調査によると、56.2%の企業等がインターンシップを今年も実施予定と回答しているようです。

 

 

インターンシップの変更点概要】

 

 このようにとても重要なインターンシップですが、25卒採用(2023年4月時点で大学3年生)となる今年開催分から、その定義や一部のルールが変わります。これは厚労省・経産省・文科省の3省合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の改正(令和4年6月)によるもので、日本経済団体連合会と大学関係者で組織する産学協議会が公表した報告書において、企業が実施するキャリア形成支援活動が4つに類型化されたことで、実施の目的や時期、そして仕事体験の有無などに応じ、以下のように区分される事になりました。

(学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組の四つの類型)

 タイプ1  オープンカンパニー
 タイプ2  キャリア教育
 タイプ3  汎用的能力・専門活用型インターンシップ
 タイプ4  高度専門型インターンシップ

 このうち【インターンシップ】の名称で開催できるのは、タイプ3 ・タイプ4のみとされ、これまで行われきたインターンシップは主に【タイプ3】に該当することになります。そしてこのタイプ3の要件を確認すると以下のようになっており、①~⑤をすべて満たす場合に限り、インターンシップを通じて得た学生情報を採用活動開始後に活用(例:採用活動のエントリーを促す資料の送付、書類選考の免除など)することができ、加えて適正な基準を満たしていることで、「インターンシップ」と称して「産学協議会基準準拠マーク」を掲げることができます。

 ① 就業体験要件・・・実施期間の半分を超える日数を就業体験に充てる
 ② 指導要件 ・・・社員が学生へ指導をおこない、フィードバックする
 ③ 実施期間要件・・・5日間以上(専門能力活用型は2週間以上)
 ④ 実施時期要件・・・学部3・4年ないし、修士1・2年の長期休暇期間
 ⑤ 情報開示要件・・・プログラムの主旨、内容などをホームページなどに公表

※仮に今年、要件を満たすインターンシップを行ったとしても、来年3月の採用広報活動の開始までは、ここで得た学生情報を採用活動に使用することはできません。

詳細については以下のサイトをご確認下さい。
質の高いインターンシップの普及に向けて、「産学協議会基準準拠マーク」を決定しました!(日本経済団体連合会)

 なお、これまでに多く開催されているような、例えば1日限りのインターンシップなどについては、基準を満たさず「インターンシップ」の呼称が使えなくなるため、大手就職情報サイトでは、今後はワンデイ仕事体験などの名称に変え、引き続き開催情報そのものは掲載できるようにする方向性のようです。しかし前述の基準を満たしていませんので、企業側は採用活動開始後にここで得た学生情報は活用できないことになりますので、インターンシップの計画時には留意が必要となります。

 

 

今後のインターンシップ展望】

 

 以上、今回の変更概要を見てきましたが、今後の展望について考えてみたいと思います。まず現時点で大手就職サイトでインターンシップ開催情報を確認すると、現状はまだ5日未満のものが多く、ワンデイお仕事体験(仮称)の実施が多く見られ、各業界の大手の一部が、社内のリソースや人員が充実していることもあってか、5日以上のインターンシップの開催を告知していることが確認できます。(2023.5.1時点)

 この点は昨年同様の傾向であるため、多くの企業が今年は様子を見ていると予想されますので、いきなり現場で大きな変化は無いものと思われます。しかし、産学協議会の報告書を読み進めていくと、今後のスケジュールにおいて、25卒の実施状況を鑑みて翌年の26卒のタイミングで早々に見直しや検討を図ることが示唆されており、場合によっては更に統一性や規律を求めるような形にルールが変更され、結果的により中小企業に不利とも思われる方向へ進んでいくことも考えられます。少なくとも今後数年でインターンシップの在り方そのものは確実に変わっていくものと予想されますので、早い段階でインターンシップと並行可能な母集団形成の施策を検討していくことが、中小企業にとって大切になることは間違いありません。

 なお、弊所と致しましてはこの点について古典的ではありますが、OB・OG訪問の積極的な受入をお勧めしています。近年インターンシップがクローズアップされて見落とされがちになっている現状がありますが、インターンシップ以上に効率良く、採用に繋がる可能性のある有効な手法です。実際に弊所が社会貢献活動として実施している大学3年生むけの就活相談においても、OB・OG訪問を活用している就活生は、社風の体感と業務理解度が高く、そのまま内定しているケースも珍しくありません。未着手の場合には取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

【まとめ】

 

いかがだったでしょうか。インターンシップも今後数年で大きく変化していくことが予想されますので、インターンシップの設計見直しや、最後に述べましたOB・OG訪問の活用などのノウハウご提供が必要でしたら、ぜひ弊所の方までお気軽にご相談下さい。なお、東京商工会議所の登録会員である258社への調査によると、タイプ3の汎用型インターンシップを今夏実施予定と回答した企業の割合は、22.1%となっています。


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