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えるぼし認定の取得方法について

皆様は「えるぼし」というキーワードをお聞きになったことはありますか?厚生労働省は一般事業主行動計画を策定・届出をした企業のうち、女性の活躍推進に関する取組実績の状況が優良であった企業に対して、当該企業からの申請により厚生労働大臣の認定と共に「えるぼしマーク」の付与をおこなっています。

 

現在、政府が女性活躍・男女共同参画の取組を加速し、国を挙げて女性の活躍推進の後押しを行っていることもあり、企業側の認知度や注目度が高まっています。今回は「えるぼし認定の取得方法」についてご紹介します。

【一般事業主行動計画の策定】

 

 えるぼし認定を受ける前提として、「一般事業主行動計画」の策定と届出が必要となります。この一般事業主行動計画とは、各企業において雇用する、自社の女性の活躍に関する状況の把握・課題分析をおこない、女性社員の活躍推進にむけた目標を設定すると共に、その具体的な取組内容やスケジュール等をまとめたものです。令和4年4月1日の改正女性活躍推進法によって、現在では101人以上の企業においては策定と労働局への届出、更には情報公表することが義務づけられています。仮に100人以下の企業がえるぼし認定を目指そうとする場合、本来は義務とされていませんが、認定申請にむけてこちらの一般事業主行動計画の策定・届出・公表を行う必要が生じます。実際の企業の対応手順としては、以下のような流れとなります。

 

 <STEP1> 自社の状況把握・課題分析

 <STEP2> 一般事業主行動計画の策定・社内周知・外部公表

 <STEP3> 一般事業主行動計画の届出

 <STEP4> 取組の実施と効果の測定

 

具体的な策定・届出・公表の方法については、厚生労働省が公表している以下のパンフレットをご参照下さい。

 

・「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう」(引用:厚生労働省HP)

 

 

なお、よく混乱される企業があるのですが、実はえるぼしとは別に、次世代育成支援対策推進法に基づく、子育てサポートの優良企業に対する「くるみん認定」と呼ばれる制度があり、そちらにも同じく一般事業主行動計画というものが存在しています。しかし今回ご紹介している「えるぼし認定」において必要となるのは、あくまで「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画ですので誤解のないようにご注意下さい。

【えるぼし認定】

 

 えるぼし認定を受けるためには前述にて解説致しました一般事業主行動計画の策定・届出、そして目標達成にむけた取組を推進していくわけですが、これと共に以下の5つの評価基準項目を1つ以上達成する必要があります。なお、基準値については、申請するタイミングの前事業年度実績数値を使って確認を行うことになります。

 

評価項目

えるぼし

内容

基準1

採用

男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度であること。(直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率 ×0.8」 が、直近3事業年度の平均した「採用における男性の競争倍 率」よりも雇用管理区分ごとにそれぞれ低いこと。)

又は

直近の事業年度において、次の(i)(ii)の両方に該当すること。 (i) 正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること。 (ii) 正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること

基準2

継続就業

〇 直近の事業年度において、次の(i)(ii)どちらかに該当すること。

(i)                「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務 年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であること。 (※) 期間の定めのない労働契約を締結している労働者に限る。

(ii)               「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が 雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。 (※) 継続雇用割合は、10事業年度前及びその前後の事業年度に採用さ れた労働者(新規学卒者等に限る。)のうち継続して雇用されている者の割合

 

〇 上記を算出することができない場合は、直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であること。

基準3

労働時間等の働き方

雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の 合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であること。

基準4

管理職比率

直近の事業年度において、管理職に占める女 性労働者の割合が産業ごとの平均値以上である事。

又は

「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階 から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷ 「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上である事。

基準5

多様なキャリアコース

〇 直近の3事業年度に、大企業については2項 目以上(非正社員がいる場合は必ずAを含むこと)、中小企業については1項目以上の実績 を有すること。

A 女性の非正社員から正社員への転換

B 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理

 区分間の転換

C 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用

D 概ね30歳以上の女性の正社員としての採用

 

 

そしてえるぼし認定は上記の基準項目をいくつ満たしているかによって、

3つ(1つ星~3つ星)の段階が用意されています。

 

 

えるぼし(3段階目)

●えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準の全てを満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。

えるぼし(2段階目)

● えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち3つ又は4つの基準を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。

● 満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該基準に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること。

えるぼし(1段階目)

● えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち1つ又は2つの基準を満たし、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。

● 満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該基準に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること。

 

 

なお、上記の1・2段階目に記載されている通り、5つの評価項目のうち基準に満たない基準については、前事業年度の数値からさらに前2事業年度に遡り年々段階的にその実績数値が向上(改善)していることが求められます。そのため単純に1つだけ基準を満たしていれば良いというわけではなく、5つの評価項目をバランスよく改善していくことが認定を取得するために必要な対策と言えます。

 

また、その他にも認定のためには重大な法令違反が無い事なども条件に含まれていますので、えるぼし認定の基準概要はこちをご参照下さい。(引用:厚生労働省)

【えるぼし取得のメリット】

 

ここまで認定の取得方法と流れを見てきましたが、最後にメリットをご紹介します。

 

     企業イメージアップ採用広報の強化

えるぼし認定を取得できた折には、認定段階に応じた「えるぼしマーク」の付与が受けられ、自社ホームページや名刺、更には自社商品にも使用することが可能となります。女性活躍推進の優良企業としての「国からの証」ですので、企業のイメージアップは間違いなく、更には今後の日本の労働力における最重要層の1つとされる女性従業員の応募増などにも効果が期待できます。

 

     公共調達における加点評価

各府省等が総合評価落札方式又は企画競争による調達によって公共調達を実施する場合は、女性活躍推進法に基づく認定企業(えるぼし認定企業)などを加点評価するよう定められています。詳細はこちらをご参照下さい。(引用:厚生労働省HP)

 

     日本政策金融公庫による融資制度

  行動計画の策定や「えるぼし」認定を取得した企業は、日本政策金融公庫の「働

  き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を通常よりも低金利で利用するこ

  とができます。なお、行動計画の策定については、策定が努力義務の常時雇用す

  る労働者100人以下の事業主に限られます。詳しくはこちらをご参照下さい。

  (引用:日本政策金融公庫HP) 

 

 

令和5年6月時点において、「えるぼし認定」企業は国内2270社、えるぼしの上位認定である「プラチナえるぼし認定」企業は国内40社と、まだまだ希少性が高い認定と言えます。これから労働力の確実な減少が見込まれる日本において、女性従業員の活躍、確保は企業の死活問題ともなってきます。これを機にえるぼし認定に関して、ご検討してみてはいかがでしょうか。


・COH社労士事務所 人事労務LABOでは、「えるぼし」「プラチナえるぼし」の認定にむけて、企業の環境整備をサポートしています。また、認定申請書類についても作成・提出代行が可能ですので、複雑な申請書類の作成などに手が回らない、よくわからないと言った企業様においては、お気軽に弊所までご相談下さい。詳細はこちらをご参照下さい。