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Eラーニングを利用した研修の注意点

近年、在宅勤務のテレワークなどが一般的になるにつれ、社員教育の形も変革の時期を迎えています。今回は在宅勤務者などに適しているとされるEラーニングの受講が労働時間になるかについて、ご紹介します。

<Eラーニングとは?>

 

 Eラーニングとは、インターネットを通じてスマホ・パソコン・タブレットなどを用いて、場所を選ばず動画による講座を受講できる学習スタイルの総称とされます。近年、研修会社や教育サービス提供会社の多くが製品として導入し、自社のノウハウを詰め込んだ独自のカリキュラムをEラーニングにて、現地での集合研修よりも安価で提供するようなサービスが増えてきています。企業においても働き方改革や、新型コロナウイルスの蔓延化をきっかけに、急速に在宅勤務をはじめとしたテレワークが普及していったことに伴い、集合研修が難しい環境になりつつあることも重なって、このようなEラーニング製品を導入するところが増えてきています。

 

 最近の製品は学習管理システム(※ LMS:Learning Management System )をデフォルト機能として有しているものも多く、企業が従業員のEラーニングの受講状況などを管理画面で逐次確認できるようになっているなど、自社の中にいなくとも社員教育を管理・実施していくことができる点も好まれている点の1つです。

 

<業務時間外における受講は労働時間か?>

 

 企業によっては教育研修プログラムとして、Eラーニングを従業員へと提供して受講を推奨しているようなケースもあります。それでは「業務時間外」に受講する場合はどうなるのでしょうか?このケースとしては、主に2つのパターンがあり得ると思います。

 

(1) 従業員の自主的な受講(自己啓発)

(2) 会社からの受講指示

 

 (1)については、特段の指示を会社から受けておらず、自らの意思によって受講をしているわけですので、原則として受講場所を問わず労働時間とはなりません。しかし、受講指示は受けていないものの、評価には実際に反映されるような事実があったり、業務上の必要性があって事実上、受講が必要とされていたような場合には、労働時間と算定される可能性があると言えます。

 

 次に(2)については、会社をはじめとした特定の場所において受講を指示されているようであれば、明確な業務指示に加えて、場所的な拘束まで課していますので、会社からの指揮命令下にあるものとされて労働時間として算定されます。しかし、そのような特定の受講場所の指定がなく、たとえば自宅で受講することが可能となっており、極端な話ではありますが、お酒を飲んだりテレビを見ながらでも受講できるといったような状況下においては、労働時間には該当しないものと考えられます。

 

<研修時間は基本的に業務時間内に>

 

 業務時間内における研修であれば、基本的には労働時間として実施されて特段のトラブルは生じないものと思いますが、問題はやはり業務時間外の実施であるように思います。もしも業務時間外に実施をする場合には、あくまで任意参加として、場所も指定することなく本人にその選択を任せ、基本的には評価にも反映をしないといった点に配慮をして研修の設計をすると良いでしょう。どうしても評価に反映させたい、業務上、知識を習得させたく受講をさせなければならないといったような場合には、やはり業務時間内に指示のうえ明確に労働時間になることを周知したうえで、社員に取り組んでもらう方が、結果的には社内の健全なコミュニケーションや社内の統制からすれば良いと思います。

 

 せっかく会社としても社員教育に投資をしたのに、その社員が不満をもって退職をしてしまっては本末転倒になってしまいます。また、Eラーニングを利用している会社からは、Eラーニングを福利厚生として導入したが、ほとんど使われていないなどと言ったケースも見られます。Eラーニングは便利である反面、自主性に任せて受講してもらう形式にすると、社員各自のモチベーションや自己啓発に対する意識の差などによって、機能しないことも多々ありますので、単に導入するだけでなく、どのように受講してもらうか、どのようにキャリア開発に生かしてもらうか、会社としてどこまで任意に、どこまで必須でなどの点もきちんと議論を重ねたうえで決定し、それに応じて実施する時間や期限を決めて運用すると良いでしょう。その際に今回ご紹介した労働時間への該当有無が問われることがありますので、きちんと事前に取り決めをおこない社員へと周知しましょう。

 

<まとめ>

 

 これから人材不足は更に加速し、即戦力人材の確保はより厳しくなっていくことが予想されます。その際に中小企業の競争において、自社の「育成力」が問われる時代がやってくるとも言えます。テレワークが普及した中でこれからもEラーニングや動画を利用した、非対面式の研修サービスが増えていくと予想されますので、社員との不要なトラブルを避けると共に、有意義な研修が実施できるように検討してみてはいかがでしょうか。

 


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