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学校斡旋の増加につながる高卒採用術

現在、需要が大幅に増している高卒採用。独特なルールのもと運用がされている採用マーケットのため、初めてチャレンジされる企業は苦労される傾向にあります。今回は高卒採用における学校斡旋の件数増加にむけた、具体的な施策の一例についてご紹介します。

 

<高卒採用に必要な準備とは?>

 

 以前に弊所の人事労務コラムでも取り上げたとおり、大卒の新卒採用とは異なり、高卒採用においては各地域のハローワークが一括して求人を管理しています。そのため大卒者のように、リクナビやマイナビに代表される就活サイトを通じて自己応募することはできず、必ず在籍校を通じて求人企業へと応募する必要があります。企業においては、まず求人を一括管理しているハローワークへと求人票を提出する必要があるのですが、これも勝手に自由にできるわけでなく、学校関係者・経済団体・行政などが合議し、毎年全体の一斉スケジュールを策定して公表しており、このスケジュールに基づいて動いていく必要があります。(引用:厚生労働省ホームページ)

 

昨年、令和6年月度卒については、ハローワークによる求人票の申込み受付は6月1日から開始とされました。企業はこの日を目標にまずは自社の高卒求人の内容を取りまとめ、指定の求人票、またはハローワークインターネットサービスを利用して求人を申し込みます。

 

しかし近年、高卒採用においては求人数の増加が著しく、苦戦をする企業が目立ちます。それもそのはず、昨年、令和6年3月卒においては、求職者は前年比5.5%減のなか、求人倍率は前年比0.51%の大幅上昇で3.52倍にまで膨れ上がっており、もはや求人を出しておけば学生の応募が来るという時代ではなくなっています。

 

このようなマーケットの中、企業に求められるのは他社競争に勝つための採用広報という意見も多くみられており、「自社の見える化」を追求し、高校の就職担当の先生・就活生・保護者に対して、力強く訴求していくことが求められるようになっています。この点において、現在の採用市場を見ると大卒採用に力を入れている会社が多く、自社ホームページの新卒採用ページのほとんどが「大卒採用」のみを取り上げており、未だ「高卒採用の専用サイトやページ」を用意している企業はかなり少ない現状にあります。そのため現在の高卒採用においては、この「採用広報」の面において、まだ他社と「差」をつけることができる部分とも言えますので、検討のうえ社内で検討していくと良いでしょう。

 

<学校訪問は効果的>

 

 次にあげられるのは、「学校訪問」です。これも前述の一斉スケジュールに規定されているのですが、開始できる時期が決まっています。昨年は7月1日から「企業による学校への求人申込及び学校訪問開始」とされました。おそらく今年も同じスケジュールになるのではないかと思います。この学校訪問は昔から行われている、企業側から各学校に対してのポピュラーな広報戦略と言えます。

 オーソドックスな流れとしては、企業側からは各学校にいらっしゃる就職担当の教諭宛に事前連絡を入れてアポイントをいただき、直接現地へと訪問をおこなって、自社の説明や求人票を持参し学校側からの斡旋を依頼します。高校の所在については、各地域の教育委員会に学校の全リストが掲載されているところも多く、親切なところでは住所や電話番号なども載せてくれていますので、これに基づきアプローチすると効率的です。

 

 ただ、そうは言っても学校の件数はそれなりに多く、大学生の新卒採用もまだ並行して進めている企業も多いため、全対象校へ訪問するのはなかなか厳しいものではあります。しかし各学校へアプローチをしないことには、応募してくれる学生が増えませんので、自社のターゲット校のリストを早めに作成して訪問を進めていき、それでも周り切れないという学校に対しては、電話でのご挨拶に加え、郵送などで会社資料と求人票だけはお送りしておいた方が良いと思われます。なお、近年では加熱する高卒採用の現状も相まって、高卒採用の支援企業も増えており、このあたりの学校リストの作成から会社資料の発送も依頼できる支援企業が多々ありますので、余裕がないという場合には利用を検討してみると良いでしょう。

 

<採用実績の重要性>

 

 前述のような手法を用いて、企業は各学校へとアプローチしていくわけですが、高卒採用の面白い慣習の1つとして、大学の新卒採用と違い、採用実績が一度できると当該採用実績校とその後もパイプが自然にできるようになります。学校側からすれば、自校の生徒が採用された経験があるわけですので、就職担当の教諭から、就活生やその保護者に対して、紹介のお勧めがしやすいという側面が関係しているようです。企業側からしても、前回の採用で入社した卒業生が引き続き勤務をしているということであれば、その学校への印象も良いですし、期待感が持てますので、双方にメリットがあると言えます。そのため高卒採用における実績校については、確実かつ定期的にフォローをおこなっておくと良いでしょう。

 

 現在、新卒採用については周知のとおり、大学生・高校生を含め、大激戦の採用市場が続いています。また少子高齢化が進む国内において、これから更に高校生の新卒採用に算入する企業が増えてくることも予想されます。そうなりますと、その多くの企業が当然に各学校へと広報・アプローチを図っていきますので、なかなか採用広報や学校訪問では違いが見せられなくなることも容易に想像がつきます。そのような近い将来が予想されるなか、この採用実績と言う自然にできる良好な関係性は、今後より採用企業にとっては武器になることは間違いありません。そのため高卒採用への参入を検討されている企業においては、なるべく早くに採用を開始し、その独特な高卒採用のルールに慣れていくとともに、採用実績を少しでも残していくことで、今後の高卒採用の成否が変わってくるものと弊所は考えています。

 

<まとめ>

 

大学生の新卒採用と異なり、ルールが一本化されている高卒採用。企業側から取れる手法も比較的に限られています。そのため毎年、計画と準備は早い段階から進めていくことが重要とも言えます。今年も間もなく、今年度卒の高卒採用のスケジュールが発表されることと思います。準備期間が非常に少なくなってきてはいますが、これから高卒採用に始めてチャレンジしようという企業様や、既に参入しているが上手くいっていないという企業様におかれましては、ぜひ弊所の方までお気軽にご相談下さい。

 


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