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労働者名簿の書式や更新方法

 皆様は「法定三帳簿」を知っていますか?これは労働基準法で作成が義務付けられている「労働者名簿」・「賃金台帳」・「出勤簿」の3つを意味した総称です。その中でも意外と知られていない「労働者名簿」について、ご紹介したいと思います。

<労働者名簿とは?>

 

 「労働者名簿」とは労働基準法107条において定められた、その名のとおり従業員(=労働者)の情報が明記された書類のことです。

 

◇労働基準法107条

「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。) について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。」

 

労働者名簿は従業員がたとえ1名であっても作成を義務付けられており、日雇い労働者を除いて、正社員、パート・アルバイト、契約社員などの雇用形態を問わず、原則として雇用している従業員全員分のものが必要となります。これは株式会社などの法人だけに限らず、個人事業であっても適用されます。違反した場合には30万円以下の罰金が科されますので要注意となります。

 

<必要事項とは>

 

実際に労働者名簿への記載が義務付けられている項目は以下の通りです。

 

     労働者の氏名

     生年月日

     履歴

     性別

     住所

     従事する業務の種類

     雇用した年月日

     退職や死亡の年月日及びその理由・原因(退職の事由が解雇にあっては、その理由を含む。)

 

上記の8つの項目がきちんと明記されていれば問題ありません。

 

この中で②履歴が気になる方も多いと思いますが、法令や行政通達等で具体的な指示や説明はなく、一般的にこちらには入社後の「異動や昇降格」などの履歴を記載することが多いと言えます。その他、学歴や職歴を記載されているケースも見かけますが、各事業場において実際に日々の運営において、有益となる方の情報を記載しておけば良いでしょう。また、⑧退職や死亡の理由・原因という項目もありますが、こちらは労働者名簿の保管義務が退職日から起算して3年と定められていますので、退職者についてもその履歴を残しておくことを目的とした主旨であると考えられます。

 

なお、様式については具体的な指定様式はありませんので、各事業場にて書式を作成しても構いませんし、厚生労働省のホームページに様式が備え付けられていますので、そちらからダウンロードも可能になっています。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/b.pdf

 

後述しますが電子データでの保管も可能ですので、クラウド型の人事労務管理ソフトを活用して必要項目をまとめておくことも可能です。(ただし注意点として、必要時に速やかにアウトプットできることが必要となります)

 

<労働基準法に基づく管理の注意点>

 

 最後に保管についての注意点です。まず労働者名簿は前述の労働基準法107条で明記されていますように、「各事業場ごと」にと指定されています。そのため例えば支店や店舗を増設した場合には、その都度に当該事業場の労働者名簿を追加で作成していく必要があります。また、労働基準法施行規則53条において、労働者名簿の更新については「遅滞なく」おこなうことが明記されています。そのため例えば従業員の転居が発生した場合にもその都度に対応し、遅くならないように速やかに更新をしましょう。

 

保管の方法については、デジタル化が進む社会において、電子データでの記録・保管も行政通達において認められています。前述の更新の手間や随時の更新などを考慮すると、やはり電子データによる管理が最も効率的、かつ確実と言えるでしょう。市販されている人事労務ソフトにおいては、労働者名簿の機能が最初から備え付けられている者もありますので、自社の管理に合う製品がないか、色々と調査してみるのもお勧めです。

 

実は最近では、助成金や補助金において、この労働者名簿の提出が求められることも増えていますし、労働基準監督署などの調査などにおいても、この法定三帳簿の管理状況を確認されますので、日々の運用方法を検討しておきましょう。

 

<まとめ>

 

 人事・労務部門の担当者にも意外と知らない方も多い労働者名簿、しかしいざと言う時に必要となる書類・データですが、その都度に情報の更新が必要ということもあり、一回作って終わりというわけにもいきません。そのため必要最小限のコストで、担当者の労力をかけず、いざと言う時にすぐアウトプットできる形で運用をするか、ここが大切になりますので、一度、お考えになってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 


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