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新卒採用 ~選考プロセス再検討のススメ~

今年も3月を迎え、新卒採用の広報が解禁されました。ご存じの通り、現在の新卒採用はまさに「激戦」の一言。2015年あたりから一気に説明会に来てくれる学生の数が減ってきたと仰っている企業様も多くなっています。しかし若者の採用は会社の存続にかかわる重要なミッション。今回は中小企業における、新卒採用の選考プロセスの再考についてご紹介したいと思います。

【新卒採用の選考】

 

 まずは一般的に見られる新卒採用における選考の流れに触れておきたいと思います。企業によってさまざまではありますが、主な選考の流れは以下の通りです。

 

     インターンシップの開催・受入

     会社説明会の開催

     採用面接・適性検査等の実施

     内定

 

2010年を過ぎたあたりから、以前にはあまり見られなかったインターンシップ(業務体験)が積極的に活用されるようになりました。それ以前の就職活動においては、大手就職サイトである、「リクナビ」・「マイナビ」のリリースを合図に、一斉に企業の採用広報が始まり、各社が説明会を実施した後、採用面接をおこなっていましたが、現在では各種SNSの普及などによって、リクナビ・マイナビなどのグランドオープンの日である、経団連指針で定めた広報開始日の3月1日を待たずして、会社独自で就活生へと広報ができるようになってきており、大きく企業側の動向が変わってきています。

 

しかし採用選考そのものについては、カジュアル面談と呼ばれる、主に面接前に実施するざっくばらんにラフな面談をする手法が新たに登場してきたとは言え、これは現状として中途採用に対してメインに利用されている手法となっており、新卒採用についてはオンライン面接が以前よりだいぶ増加したものの、従来通りに採用面接が実施されている点においては大きな変更はないものと言えます。

 

 

【選考の流れを再考してみる】

 

 いつの時代も就活生にとって話題になるのが、企業の面接回数です。最近では「1回だけ」、「書類選考は必ず通過」などとする企業もありますが、弊所の関与先や大手就職サイトの情報を閲覧する限りでは、「2~4回」での実施が多いようです。概ね一般的な流れとしては、1次が人事の現場担当、2次が人事の責任者、3次が役員、4次が社長で最終と言ったケースのようです。

 

 しかし本当にこの流れで良いのでしょうか?実は弊所では、このような慣習とも言える、人事から役員、役員から社長と、徐々に重役へと進むオーソドックスな流れについて、関与先へ再考を促すこともあります。小規模の事業者様においては、応募者の数そのものが少ないことも多いと思います。そうなりますと、前述したような慣習的な面接を長々していたのでは、最終面接までたどり着く可能性も単純に考えて低くなります。

 

 このような場合、弊所では例えば思い切って「社長面接」を「1次」、人事を2次、役員を3次などと順番を入れ替えてみることなどを提案することがあります。この施策のメリットとしては、一次面接から社長が出てくる企業が少ないためシンプルにかなり採用広報として目立ちますし、自社の採用ブランディング的な面を後押しすることにも繋がります。

 

 その他にも社長との会話で就活生の熱意が一気に高まる可能性もあるのではないでしょうか。一度、熱意の高まった学生さんは、おそらく落選通知があるまでは、面接が3回であっても4回であっても、最後まで同社にチャレンジしてくる方が多いと思います。目的は良いと思った就活生に内定を出して入社してもらう事です。そのためには慣習に捉われず、目的達成を第一に考えたアプローチを考えてみてはいかがでしょうか。なお、応募者数が多い企業では正直このスタイルは難しいと思いますが、小規模の事業者様であって、そもそもの応募者が少ないという事であれば、そこまで社長への負担も大きくならないものと考えられますので、一度検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

【育成型面接のススメ】

 

次に弊所がお勧めしているのが、「育成型面接」の実施です。新卒採用の場合、有名企業への応募者でもない限りは、一次面接の段階から完成度が高い状態で来社するケースは本当に稀で、1シーズンでも片手で数えられる程度だと思います。しかし人事担当としては「採用基準」を意識しすぎるがため、1次面接のまま落選通知を出してしまうようなことも少なくないと思います。

 

しかし本当にこれで良いのでしょうか?その面接当日、応募者がたまたま上手くお話が出来なかったり、体調が芳しくなく反応が悪かったりと言うことは考えられないでしょうか。また、応募時期が3~4月など就活開始直後であって単純に経験不足であることも考えられないでしょうか。

 

 このような場合もあり得ますので、弊所では「出来る限り1次面接での早期で安易な落選通知はしない」ようにお勧めしています。小規模の事業者の場合、元々の応募数自体が多くありません。その分母が少ないところから採用を進めていく為には、通過の検討以上に、落選の検討を大切、且つ慎重に進めていくことが求められるのではないでしょうか。ここで弊所がお勧めしているのが「育成型面接」です。一次面接で採用基準を満たしていないという場合には、面接終了時にフィードバックを積極的に活用し、課題と多少の時間を与えて、「1.5次面接」とも言うべき位置づけの面接実施を推奨しています。

 

 この「1.5次面接」の対象者の中には、指摘を受けたことでそれまで以上に、ご自身の今後のことを考えてくれる方がいます。このような方は課題に取り組みつつ、他社の選考を進めていくうちに、ご自身のお考えや意思がまとまっていき、場合によっては「1.5次面接」でまったく見違えるようになって戻ってくる就活生もいらっしゃいます。

 

 

 育成型面接のメリットは、「自社への応募熱意があって、素直にアドバイスを聞き入れることができる人材」の見極めに役立ち、入社後もきちんと育成や指導をすれば、個人差はあると思いますが、総じて自社で頑張ってくれる人材であることの期待が持てることと思いますし、就活生も「この会社はきちんと教えてくれる」と感じてくれることと思いますので、相互の信頼関係の構築にも役立ちます。ぜひ導入のご検討をお勧め致します。

 

 

【まとめ】

 

いかがだったでしょうか。新卒採用の場合、採用担当者の負荷は増えますが時間をかけて応募者と向き合う事で、応募者の新たな一面を見ることができ、採用へと繋がるということも考えられます。固定概念にとらわれず、自社独自の選考プロセスを検討してみると良いでしょう。

 


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