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内定・内々定の違いと対応注意点について

 令和5年も間もなく年末を迎えます。企業においては次年度の新卒採用の準備と、来春に入社が内定している方の入社準備を同時進行で進める時期となり、人事部やご担当者が非常に慌ただしくなる時期を迎えることになります。

 

 

 ところで新卒採用をおこなっていると、「内定」・「内々定」などの言葉をよく聞くと思いますが、意外とその違いについては理解されていないことも多く感じます。今回は内定や内々定に関しての位置づけなどをご紹介したいと思います。

<内定の位置づけ>

 

内定とは、一般的には企業側から採用決定の通知がなされ、応募者がそれを受けて入社意思を通知(表明)することによって双方の意思が重なり、入社が「約束」された段階のことを指します。しかし新卒採用の場合には、経団連指針にて10月1日以降に正式な内定を出すようにとしている関係があり、正式な内定通知よりも前に出すものであるがために、内々定と言う表現が用いられているようです。

 

 内定と内々定については一見、同じように見えるかもしれませんが、性質が大きく異なります。どういうことかと言うと、正式な「内定」の場合には、始期付解約権留保付き労働契約が成立しているものとされ、ある条件下においては契約の解約が許容される可能性があるものの、特定の日付(入社日)を始期とした労働契約が企業と内定者に結ばれたことになりそのためこの内定を取り消すことは、労働契約の一方的な解約にあたるために「解雇」となり得るとされているのです。

 

ここで言う契約の解除(内定取消)が認められる場合とは、どのような場面を指すのかと言うと、裁判所は「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また、知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」としており、主に以下のようなケースに限られるとされています。

 

1)学校を卒業できなかった場合

2)就労に重大な支障が生じる健康上の問題がある場合

3)履歴書や誓約書などに重大な虚偽記載がある場合

4)刑事事件を起こした場合

5)経営難で整理解雇の要件を満たした場合 など

 

そのため例えば、「他の応募者の方が良さそうだから」、「人数を取りすぎてしまった」などの企業側の一方的な事情における内定取消は基本的には認められない可能性が高いと言えますので注意が必要です。

 

 

<内々定の取消にも注意が必要>

 

では、新卒採用に特有の内々定の段階ならば、取り消しをおこなっても問題ないのでしょうか。内々定は前述の通り、正式な内定の前段階であり、まだ労働契約が成立したとまでは確定的に言えない状況のため、内定のような法的保護までは受けないとする考えが原則です。しかし内々定の段階であっても、その状況次第では事実上の内定とされ、労働契約が成立していたとされる可能性(リスク)があります

 

例えば、以下のようなケースです。

 

     他社の選考(就職活動)を終えていた

     入社誓約書を提出させていた

     個別に具体的な労働条件が提示されていた など

 

上記はあくまで例示ではありますが、内々定を受けている応募者が当該企業へ既に入社意思を通知(表明)し、他社の選考を終了して就職活動を終えていた場合や、実際に入社にむけた手続きが進行していたような場合には、事実上、内定が成立していたとされ、労働契約が成立していたとして契約の解除(解雇)となってしまう可能性があります。そのため一概に内々定であれば、取消をしても問題ないと考えるには大きなリスクがありますので注意が必要です。

 

<企業の対応について>

 

 万が一、内定取消しを行わなければいけないような状況が起きた場合には、前述の通り、内定はもとより内々定であっても、企業側にとっては大きなリスクを伴うことがあります。そのため取り消しをしなければならない事態に遭遇した場合には、速やかに弁護士社会保険労務士などの専門家へご相談をされることをお勧め致します。

そして、このようなリスクのある場面に遭遇しないよう、採用そのものについて事前の計画を綿密に立てることや、面接や適性検査を用いて、適切な人材に対して内定を通知することが非常に大切です。

また、それ以外にも採用面接官面接スキルなども、適切な人材か否かを判断するうえで重要になると共に、不要なトラブル防止にも繋がりますので、社内の面接官に対する研修導入なども検討してみると良いでしょう。

 

<まとめ>

 

 新卒採用は年々激化する一方ですが、計画・行動・慎重な決定が求められることに変わりはありません。今後は更に応募数が全体的に落ち込むことが見込まれています。そのような場合であっても、企業の採用方針や基準は大切にしていただき、面接等を通じた選考の精度も上げていくことがトラブル防止に繋がります。


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